Q: 「巻島のうちって,どんな仕事?」
「ご両親の職業はなに?」と 子供の頃からいままで何度同じことを聞かれたことでしょうか. そして,そのたびに答えに窮してきました.
A: 「会社員でも公務員でも医者でも作家でも農林水産業でもありません. お店やさん,でもないでしょう. 職人や芸術家とも言いきれません. 中学校の先生は,『自由業』だねとおっしゃっていました.」
少なくとも,雇われ人ではありません. そこで,質問を受け流すときの答えは,
A: 「自営業です.」
Q: 「で,自営業って,なにやってるの?」
こう聞かれると,しどろもどろに言葉を列挙していくしかありません.
A: 「 美術工芸 といっているようですが, 淡水真珠 と 貴金属 で, 指輪,ネックレス,イヤリング,ブローチ, タイピン,キーホルダーなどの アクセサリー を創ったり, 糸で帽子にもウィッグにも見えるような頭や髪を飾る装飾品を創ったりしています. この帽子のようなものは特許を取ったものの, まだ一般的な名称がなくて, 一応,『 頭飾品 』(トウショクヒン) とか 『 Head Ornament 』(ヘッド・オーナメント) と呼んでいますね. カツラ(ウィッグ)じゃなくて帽子だと言っていたこともあります.」
Q: 「お父さんがつくっているの?」
A: 「貴金属類では,母がワックスでデザイン,原型をつくって, 父がロストワックス鋳造して製品化しています. 最近は鋳造自体は外注しているようですね. 『 頭飾品 』 Head Ornament のほうも母がデザインしています. 髪の毛くらいの細さで様々な色の化繊の糸を使って, 頭にかぶったり,髪に付けたりする飾りのようなものをつくっています. 父が営業的な面をやっているようですね.」
Q: 「うらやましいご職業ですね,」
A:
「外から見ればそうでしょうね.
でも,もうかりません.
両親が言うには,
『金儲けのことしか考えていない連中が多すぎる』
ので,
はじめに金儲けありき の企業文化の人とは話がかみ合いません.
このごろはお客様がついてきたようですが,
どうやって生活費と制作費を捻出しているのかずっと不思議でした.
また,両親曰く,
『 マキシマ の製品は,
世界で唯一の独創的なもので,真似なんかできっこないし,
うちも人様のまねはしない』
ようなものをつくっているわけで,
ほんものを見る目と感性に自信を持っている人にしか,
マキシマ のよさは理解できないでしょう.
」
余談ですが, もしも,生活に不安がない程度にでもお金がもうかって, マキシマ の独創性とよさが理解できていたならば, 私は仕事を継いでいたことでしょう. 実際には,「Eureka! わかった」と思えると考え, 「おもしろい」と感じていた科学技術の方面に進路を求めてしまったわけです.
註:ここでの「 マキシマ 」は 実家の家業(マキシマ研究所) とその作品のことです.
Update: 2001.4.26