前回、Canon EF-S18-55mm F3.5-5.6 II USM レンズを分解してみる では絞りユニットのフレキシブル基板(ポリイミドのケーブル)が切れかけていることを確認しました。
写真は分解中なのですべてのフレキシブル ケーブルが外してありますが、絞りユニットにつながるフレキだけを外しておけば、設定上での絞り「開放」扱いで Err 99 にならずに撮影できます。分解して絞りユニットを取り出し、絞りの位置を好みの位置にしておけば、常にその絞りになります。Exif は実際の値ではなく開放で記録されます。
それではおもしろくないので、フレキをバイパスして繋いでみました。
前回の分解では前玉と、後玉・絞りユニットとを組み立てるときの位置がわからなくて苦労したので、確認しながら分離しました。
焦点距離35mm付近で分離すると自然です。自重で一番短くなっているということではないかと思われます。
写真の中央右側、縦の溝(凹)に凸にはまっているところがあります。組立時はこれを組み合わせます。円周上に3カ所です。これはその3カ所のうち、前回「ストッパー」と称していた棒状の部品がネジ2個で固定される場所の近くです(凹凸の右の正方形に近い空間)。
写真左上から中央に斜めに走る溝の先に穴が開いています。ここが 55mm のときに鏡筒側面に現れるネジとカラーの位置です。3カ所。
組立上は同じ位置でも、焦点距離のリングやフォーカスのリングを左右に回すと違う位置になります。上の3つとその上の1つの写真は同じところですが、リングを左右に回しています。鏡筒の長さがふわっと変わる感触を手で憶えておきます。その範囲を超えて回すと、すかすかに回る位置が存在していて、その位置では組立できません。
中程の縦のシャフトはオートフォーカスの超音波モータから駆動される軸で、ピニオンギヤを回転してラックを移動、フォーカスリングの回転になります。そのときのフォーカス位置を写真右のブラシでエンコード、フレキで基板につながります。
後玉と絞りユニットを上に引き抜くと前玉から外れます。写真の中央上はAF/MF 切り替えスイッチの金具で、その反対側に絞りユニットのフレキが位置しています。
絞りユニットと後玉を上に持ち上げると抜けます。(と書いていて、ひとつ上の写真のように分解しなくてもよかったのかな?と思えてきました。どんな構造だったかな……)
右下のコの字の溝に、前回ストッパーと書いていた棒がはまって回転します。フォーカスと思われます。
絞りは写真の下面にあります。フレキが切れかけているのがわかります。フレキの根本を見ようと絞りユニットのネジを外しましたが、一部がハンダ付け、残りは更に奥へと続いていました。フレキが切れたら絞りユニットごと交換する構造です。絞りユニットのフタのネジはネジ止め剤でロックしてあったので、ばらしてはいけないところだったのでしょう。手持ちのまますぐにネジを締めましたが、軸がずれたかもしれません。ということで、写真はありません。
どうしたものかと考えていましたが…
を読んだらできそうな気がしてきました。
フレキはポリイミドの基板に銅箔のパターンが載り、その上に絶縁のコートがしてあります。銅箔を露出させればハンダ付けできるということだったので、デザインナイフの先端でがりがりこすってみました。慎重にやっていたら、銅の表面が現れ、ハンダ付けできそうなほどの面積になりました。予備ハンダしたらハンダがきれいに載ったので、これなら細い電線をパターンにハンダ付けできそうだという感触を得ました。
ショートしないように位置をずらしながらパターン3本分、ちぎれた前後の2カ所ずつ、計6ヶ所を露出させました。無計画にやったので位置がめちゃくちゃですが、もし次があるなら、ケーブルの長さに合わせて位置決めします。また、絞りユニットから遠い側の金具の手前は、レンズの長さに合わせて可撓、屈曲します。それを無視してしまったのは失敗でした(後述)。
かまぼこの板に仮止めして、ワイヤーをハンダ付けしました。φ 0.32 mm、AWG 28 のラッピングワイヤーがあったので使いましたが、これでも太くて大変でした。フレキのパターンが細くて見えないので、近眼用のメガネを外し、保護メガネをかけて目を近づけてやっと見える程度。拡大鏡(顕微鏡)で見ながら作業する大きさですね。
ピンぼけしているのでわかりにくいですが、ハンダ付けはお恥ずかしい状態です。ワイヤーにはコイルの細い線をほどいて使うのが入手容易だそうです。壊れかけのダイナミック イヤホンでもあればよかったんですが。自分でコイルを巻く人なら細いワイヤーを持っているんでしょうね。
ハンダ付けしたところはアセテート粘着テープでくるみました。さらにそれを絞りユニットに貼り付けました。(2番目の写真は、くるむ必要を感じる前に直接貼り付けたもの)
このあたりになってくると、疲れてきて手抜きのオンパレードです。
応急修理したフレキシブル ケーブルを鏡筒に組み付けました。焦点距離 24 mm以下になると、ハンダ付けしたところが屈曲部になってしまいました。もっと根本のほうでハンダ付けすべきでしたが、あとの祭り。24 mm 以下の広角側でも力を込めて回すと使えるのですが、ハンダ付けのところに無理なストレスがかかるので、一応、ぱっと見でわかるように目印のテープを貼り付けてあります。24 mm より望遠側は比較的機械的なストレスが少なそうです。
組み直してカメラに取り付け、絞りをいろいろな設定にしましたが、Err 99 も出ず、動作としては正常に撮影できています。かなり無理な応急修理なので動かなくなる日も近いでしょうが、代替レンズを入手するまでは使えそうです。
分解・組立中にレンズを触ってしまったりゴミがついたりしたので、デジタル一眼の撮像素子(ローパスフィルタ)の掃除 のような用具でレンズを拭いて組み立てました。光軸が多少ずれているかもしれませんが、内部構造のガタを考えると許容範囲ではないかと期待しています。光学性能が元通りになったかどうかは未確認です。
以上、自分用の備忘録でした。(このメモ書きをご覧になって何が起ころうと、私は関知しませんのであしからず。まねするかたもいないでしょうが、念のため)
(2012/6/17)