安価な望遠レンズで太陽を撮影してみた

太陽(黒点アリ) 2012/7/2 14:38 JST。3 Beach Digital 60E 600mm トリミング

金環日蝕 (2012/5/21)金星の日面経過(2012/6/6)の準備で太陽を眺めるようになったのですが、黒点が日々移り変わっていくのがおもしろくなってきました。高校の宇宙研究部のとき、昼間の太陽観測が嫌だったのはなんだったんでしょう…。ともかく、医者に、午前中(朝)の太陽を浴びなさいと指導されているので好都合です。強い光を浴びてから14時間後にメラトニンが増えて眠くなるリズムになるはずだという話ですね。

太陽を浴びるのはいいのですが、遮光プレートや遮光フィルタごしでも、あまり太陽を凝視したくはありません。屈折望遠鏡に太陽投影板を取り付けて観察・スケッチするのが無難ですが、望遠鏡は持っていません。古めのエントリークラス一眼デジカメ(EOS Kiss Digital N)にキットレンズ(18-55 mm)やマクロレンズ(60 mm)では写る太陽が小さくて、ときどき現れる大きな肉眼黒点がやっとわかる程度です。双眼鏡にコリメート撮影もなかなかうまくいきません(これはたぶんやり方が悪いんでしょう)。

EOS Kiss Digital Nの撮像素子はAPS-Cサイズで、22.2 × 14.8 mmです。太陽の視直径は約0.5°なので、焦点距離÷100くらいの大きさの像になりますから、焦点距離1000 mmで太陽がφ10 mmになって、素子の短辺14.8 mmにちょうどよい大きさになりそうです。1000 mmは無理でも、400 mmならφ4 mmで写真の2/3弱の大きさにはなります。少なくとも、手元にあるマクロレンズの60 mmでφ0.6 mmの太陽よりはずっとよいはず。

CANON純正の400 mmはおいくらかなというと、価格.comで EF400mm F5.6L USM、最安価格(税込):¥137,200 だそうです。高嶺の花ですね。シグマやタムロンでも400 mmや500 mmは最安値で7万5千円前後、中古でも手が出ません。

もっと安いのはないかなと、EFマウント、400 mmで絞り込むと、価格.com – ケンコー ケンコーミラーレンズ 400mm F8 [キヤノン用] 価格比較 で2万円ほど。

ミラーレンズってなんだろうと思ったのですが、反射望遠鏡をレンズ代わりに使うようなもので、シュミットカメラや反射屈折望遠鏡のような構造です。構造がゆえに、ボケがリング状になったり、AFでなかったり、カメラのレンズとしては使いにくいらしいのですが、もともと太陽(や同じ大きさの月)の撮影機材を探しているので問題なし。この値段ならと金環日蝕の少し前から購入を検討していたのですが、最低限必要なフィルター等に予想外の費用がかかったことや、常用しているズームレンズが壊れたり(☞ Canon EF-S18-55mm F3.5-5.6 II USM レンズを分解してみる)、本体のセンサの写りがおかしかったり(☞ デジタル一眼の撮像素子(ローパスフィルタ)の掃除)、とても買う余裕がありませんでした。

ミラーレンズを買うなら、同じような値段で天体望遠鏡のおもちゃが買えるのではないかと探したら、なくはないんですね。天体望遠鏡というと、大人の趣味なら数十万円から、入門用でもせめて十万円が予算かなと思えますが、用途を限定して割り切って使えば安物でもどうにかなるのではないかなと。「つるプラ」として有名な つるちゃんのプラネタリウムお手軽な天体望遠鏡を買っちゃおう を眺めたら、それなりに存在している様子。ミザールやケンコーは昔から望遠鏡を作っているので名前は知っています。散歩がてら最寄りのビックカメラまで行って激安モノの実物を触ってみましたが… 架台や三脚、ドローチューブのガタが、ほんとにがたがた。それ以前に、展示品、壊れてますね…。ビクセンのポルタ2(経緯台)くらいになると触った感触がよいのですが、5万円以上のクラスになってしまいます。激安品でがっかりするくらいなら、渡部潤一先生監修の「10分で完成!組立天体望遠鏡」(星の手帖社)1,580円や、コルキット「スピカ」天体望遠鏡工作キット(手作り望遠鏡) 2,625円のほうが評判がよいですし、改造する楽しみもありそうに思えてきます。丈夫な架台(三脚)があれば天体望遠鏡一式ではなく、安い鏡筒だけでもよいのですが、三脚も壊れていて買換えたいものリストに入っていたりします(笑)

かくして、あーでもない、こーでもないとネットを眺めていたのですが、Made in Japan、スリービーチ製の超望遠ズームレンズというものを見つけました。

スケッチ代わりに太陽を撮影するにはちょうどよさそうなスペックです。どうやら、スリービーチという会社、昔は天体望遠鏡やその自作パーツを作っていたところのようです。ネットで性能や使い勝手、評判を検索してみましたが、お値段相応のように見受けられました。数が出回っていないようで、中古価格は不明。

数日後、遠くまで行った散歩のついでにハードオフを覗いたら、なんと、ガラスケースの中に 3 BEACH 600 mm がありました。3000円也。レンズの標記では

  • ・3 BEACH・ DIGITAL 60E 600mm F12 φ62・67mm T-MOUNT SYSTEM  MADE IN JAPAN

ついていたのはミノルタのマウント。しかし、T マウント(ネジ)ですから、ビクセン製でもケンコー製でも、天体望遠鏡と一眼カメラを接続するTリングがそのままマウント変換アダプターになります。Tマウントというのはケンコーのミラーレンズの仕様を眺め始めてから私は認識した言葉ですが、かつてタムロンが開発したマウントだそうで、T2 ともいうようです。マウントというといかめしいのですが、φ42mmでピッチ0.75mmの細かいネジが切ってある、ただの筒です。天体望遠鏡で直焦撮影をしようとした人なら、名前は覚えていなくても、あぁ、あれか、とわかりますね。

3千円でもしばらく迷っていたのですが、結局購入しました。Tリングも通販で手配。(薬代、サプリメント代と思えば安い、安いよ、たぶん…)

梅雨時で太陽が出ない日が続いていますが、やっと試しました(2012/7/2 14:38 JST。3 Beach 60E 600mm、Canon EOS Kiss Digital N、ND 100000)。手元の三脚(と組込みの雲台)では、太陽を写真中央に入れるのは困難でした。軽くコツンとたたいただけで太陽が写真の外に飛び出すような感じです。さすが600 mm、35 mm換算で960 mm。太陽が 0.5 ° しかありませんから、頑丈で微動できる架台でなければそんなもんでしょう。

太陽、2012/7/2 14:38 JST。3 Beach 60E 600mm、Canon EOS Kiss Digital N

トリミングして太陽をいっぱいに拡大したのがページ上部の写真で、黒点がわかります。双眼鏡(8 × 42。アストロソーラー フィルター)で眺めたのと同じくらいには黒点が撮影できています。3千円のレンズでこれだけ写ってくれれば上出来です。

マニュアルレンズだとわかっていて買ったのですが、カメラ本体側でフォーカスエイドが効かないのは盲点でした。EOS用のEF(EF-S)レンズだと、AF/MFのフォーカス切り替えスイッチをMFにしていても、焦点が合えば、ファインダーに赤いマークが出て、ピピッと電子音が鳴ります。そのつもりでいたら、本当のマニュアルレンズでは、カメラ本体で合焦判定をしてくれないので、赤いマークもピピッもないんですね。では、 レンズ側に距離目盛りがあるかというと、全くありません。Tマウントで各社のボディ・マウントに変換する構造上、どこが無限遠か決められないのは当然なのですが、目盛の線も印刷されていません。とりあえず、だいたいの見当を付けて目印にテープを貼り、フォーカスリングを少しずつ移動して、太陽黒点の写真を撮ってはPCに取り込んで拡大して、一番鮮明だったのがこの写真です。もう少し合わせ込めそうなのですが、途中で曇ってしまいました。機会を見つけて、

などを参考に、再試行することになりそうです。

マニュアルレンズでフォーカスエイドを使えないか に続きます)

(2012/7/3)

3 BEACH レンズの写真は、安価な望遠レンズで太陽を撮影してみた(その2) にあります。

(2012/7/4 追記)

金星の日面経過

金星の日面経過(太陽の右下の縁) 2012/6/6 13:35 (JST)
金星の日面経過(太陽の右下の縁) 2012/6/6 13:35 (JST)

 

金星の太陽面通過です。とりあえず、この目で見られたのでラッキー。

埼玉では正午前後と13:30すぎの各数分間、雲の向こうにぎりぎり見えました。肉眼では確認できず、双眼鏡で黒点より大きくくっきりした金星が見えました。カメラで撮影できたのは数枚で、そのうちの一番はっきりわかるものを切り取り、拡大しました。EOS Kiss Digital N、EF-S 60 mm、ND 5.0フィルタ。

昨晩から雨で、朝7時ころも雨。第1接触7:10、第2接触7:28、そのあと昼前までは雨が降っていたのでネット中継を眺めていました。おもに眺めていたのは

しばらくして、雨でも雲間から見えたというつぶやきもあり、太陽の南中時刻を過ぎてだいぶ明るくなってきたので見上げたら、雲の向こうにうっすら太陽が。慌てて双眼鏡(アストロソーラー フィルター)や遮光グラス(日食グラス、溶接用の保護メガネなど)をだして、カメラをセッティングしたのですが、撮影開始前に雲が厚くなって何も写らず。双眼鏡では黒点も見えましたが、金星は真っ黒でくっきり丸かったですね。

その後曇りが続き、雲間から見え始めたのは第3接触の13:30ころ。雲の濃淡が激しく変わったので、カメラの露光がうまくいって金星(らしきもの)が写ったのは数枚でした。第4接触の13:47ころにはすっかり曇っていました。

ネットには数々のすばらしい画像がアップされていますが、それはさておき。

眼がいい人(視力1.0が目安?)だと肉眼(と適切な遮光)で金星が見えたそうですが、私の眼では見えません。大きな「肉眼黒点」がぜんぜん見えないくらいで、しかも今日は雲がかかっていましたから。日食はピンホールで投影するのがお気に入りですが、金星は難しいという情報が流れていました。老眼鏡(度数+1.0)で太陽を1cmに拡大して投影すれば見えるだろうかと思っていたのですが、今回は試す余裕がありませんでした。ツイッターを眺めていたら、実際に老眼鏡で観察された方がいました。

老眼鏡を使えば見えたんですね。

金星の日面経過と一昨日の月食のために双眼鏡に携帯でコリメート撮影の準備もしていたのですが、とてもそんな余裕はありませんでした。次の機会――百年以上先――は、もうありません。黒点をカメラに写す方法を工夫してみるとしましょう。

ところで、ずっと「日面通過」と思ってましたが、報道等では「太陽面通過」を使っています。何となく違和感を憶えていましたが、用語についての解説がありました。

「日面経過」の用語について (国立天文台 相馬充さん)

日面通過じゃなくて日面経過がもともとの専門用語だったんですね。「掩蔽」に対して「経過」を使うのが正しいようです。

(2012/6/6)

部分月食(曇り)

2012/6/4 月食(埼玉)。曇り。

CANON EOS Kiss Digital N で 15 秒おきに撮影したものを、Windows Live ムービー メーカーで、0.05 秒間隔の動画にしたもの。(Windows Media Video)

動画にしたのは初めてでよくわかりません。再生できるといいのですが… m(__)m

食の最大の少し前から、食の終わりの少し前までなんですが、曇ってます。

(2012/6/4) (23:14 若干追記)

アクリル板・遮光板で天体・太陽撮影用にスポーツファインダーを作る(1)

工房 Emerge+ さんで太陽観望用のアクリル遮光板(カナセライト#9787)を扱うとのことで(「太陽を直接撮影できるアクリル遮光版の販売を開始しました! | 工房 Emerge+」)、カメラのスポーツファインダー兼用の遮光板にすると便利かも?と、デザインしてみました。

遮光板の特性は 材料料金表 | 工房 Emerge+ の「アクリル遮光板」のところにあります。日食関係の情報や溶接用の遮光ガラスの規格と見比べると、日食グラスとしては、やや明るめのほうかもしれません。

通常は夜間の星野写真、天体撮影でスポーツファインダーを利用することを前提に、アクリル押出透明2mmA5サイズの板をレーザーでカットしてもらい、視野の枠と、カメラのアクセサリーシューにはめる足を組み立てます。太陽撮影のときは、A5の枠に、A5の遮光板を重ねます。

大きさ・寸法は、EOS Kiss Digital N のセンサ 22.2 mm × 14.8 mm と、EFS 18-55 mm、EF 60 mm に合わせました。高校レベルの三角関数でおおざっぱに計算すると、広角側 18 mm のとき、のぞき穴から枠までの距離が 15 cm で A5 より少し内側になるはずです。

  • 工房 Emerge+ でのレーザーカット用の図面

(この図を使いたい方はご自由にどうぞ。眼や機材への影響などは自己責任ということでよろしく)

アクリル押出 透明 2mm A5サイズ 1枚:¥150
レーザー加工料 A5サイズ:¥1,000 (ガイドライン割引)
アクリル遮光板 A5 サイズ 1枚:¥450
(2012/5/30 現在)

その他、消費税、送料です。別途 M2 や M3 のネジや接着剤、粘着テープなどが必要になると思われます。手持ち・差し替え・検討用にA4の遮光板も発注しました。

カメラのアクセサリーシュー周りの寸法は JIS で閲覧できます。( 日本工業標準調査会:データベース検索-JIS検索

  • JIS B 7101 「カメラの附属品取付座及び取付足」

シューにはめる足は規格上、幅 18.6 (-0.02, -0.2) mm 、厚さ 2 (-0.02,  -0.06) mm なので、 加工の目安は 18.5 mm、厚さ2 mm です。

やすりがけ、すきま埋め、接着剤盛り、粘着テープでぐるぐる巻き、割れて補修がお決まりのコースと思われますが、立体的に寸法間違えた!もありがちです。はたして組み立てられる設計になっているのかどうか。カットされたものが手元に来るまでわかりません(笑)

(2012/5/30)

追記: 組み立て ☞ アクリル板・遮光板で天体・太陽撮影用にスポーツファインダーを作る(2) (2012/6/2)

昴・三日月・金星・木星

月・金星・木星(2012年3月25~27日) の埼玉で撮った写真。

2012/03/25

金星、木星、三日月。2012/03/25 18:48 (JST)、埼玉

2012/03/26

金星、月、木星。2012/03/26 19:25 (JST)、埼玉。

2012/03/27

プレアデス星団(すばる)、月、金星、木星。2012/03/27 19:22 (JST)、埼玉。

星はすばる。ひこぼし。ゆふづつ。(枕草子)

清少納言:「星といえばプレアデス星団(昴)、アルタイル(彦星)、宵の明星(夕星)よね!」(意訳)

私の目では昴はわからず、双眼鏡で位置を確認して、カメラのシャッタースピードを調整しました。昴をうつそうとすると月が露出オーバーになってしまいますね。

ツイッターには皆さんが撮影した写真が流れていました。携帯電話でも撮れたようです。

(2012/3/27)